厚生労働省の示している健康日本21の目標のひとつに
「1日あたりの野菜摂取量を350 gにする」というものがあります。
ところが、なぜ350 gにする必要があるのか、
その数値には根拠がないそうです。
この話は、
佐々木敏著「データ栄養学のすすめ」第1章-1で詳しく触れられているため、
ここでの説明は省略しますが、
その本にあるように、
野菜と果物を1日あたり385~400 gくらい食べると
総死亡率が下がる(文献1)という研究があることや、
「みんなで今よりもっと野菜を食べよう」と呼びかけることで、
社会全体の野菜摂取量の増加と健康増進を目指すことは必要、
という考えに基づくと
野菜の摂取量を増やそうとする目標は
あってもよさそうです。
ただ、根拠のない数値目標が掲げられ、
その値が健康のための必須条件かのように使われているのは
少し残念な気もします。
以前、当時の厚生省などが示していた「食生活指針」の中にあった
「1日に30品目以上食べましょう」という目標の30品目にも
根拠って、ないんですよね。
食べる食品の種類を増やすと、
摂取できる栄養素が増えるといった研究(文献2)や
総死亡率を下げるといった研究(文献3)など
いくつか見つかるのですが、
食品の種類の数え方やスコアの作り方がバラバラで
品目をどう数えるのが最もよいのか、そこが、あいまいなまま、
「30品目」が独り歩きしてしまっていた気がします。
最近メルマガ読者さんから、
信頼性の高い発信元の発信している情報であれば
根拠(出典)がなくても信頼できるか
という質問をいただきました。
「野菜350 g」や「30品目」の話は
政府のような信頼性のある機関であっても
十分な根拠のないまま発信している情報があることを示す
具体例になるように思います。
発信元の信頼性にかかわらず、
その情報の根拠は?と出典を探してみることを
日常的に行ってほしいなと思うのです。
【参考文献】
- Wang et al. BMJ 2014; 349: g4490.
- Azadbakht et al. Eur J Clin Nutr 2005; 59: 1233-40.
- Kant et al. Am J Clin Nutr 1993; 57: 434-40.
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