食情報

大学での学びは不要!使える食情報かを判断できる5つのステップ

 

世の中にあふれている食情報(健康栄養情報)。

最近はインターネットで簡単に手に入ります。

 

けれども、たくさんの情報がありすぎて、どれが本当なのか、迷う場面も多いのではないでしょうか。

 

今回は、ある食情報が日常生活で活用できるほど十分な信頼性があるか、簡単に見分ける方法を紹介します。

 

その方法とは、図1に示している5つの評価ステップです。

(文献1を参考に作成)

 

食情報(健康栄養情報)を含む健康情報全般に使えます。

 

順に見ていきましょう。

 

ステップ1:具体的な研究に基づいているか

まずは「研究結果」に基づいているかを確認しましょう。

 

個人の体験談などに基づくだけでは不十分です。

経験談は、ある人には効果があっても、別の人には効果がない可能性があります。

どんな人にも活用しうる情報にはなりません。

 

研究結果に基づいているかは、その情報に「出典」が記載されていれば判断がつきます。

 

出典には、だれが、いつ、どこに発した、どんな題名(研究タイトル)の研究なのか、または書籍の名前や、インターネットのページなどが書いてあるんです。

 

出典が書いていない情報は、研究結果かどうかを判断できないので、そのステップは「いいえ」です。

その情報は使えるほどの信頼度はありません。

その情報を活用しようかどうかを考える必要すらないでしょう。

 

ステップ2:研究対象はヒトか

研究結果に基づいているのであれば、次にその研究が動物や細胞を対象に行われた研究ではなく、ヒトを対象に行われた研究かを確認します。

 

研究対象は、出典に記載してある研究タイトルを読むと判断がつきます。

研究タイトルに「日本人男女」とか「高齢日本人の」とか、ヒトを示す語があれば、ヒトが対象の研究です。

「マウスの」とか「○○細胞の」といった語があれば、動物や細胞実験の研究です。

 

ヒトで、どのくらいの量摂取したときに効果があったのかがわかれば、日常に活用できる可能性があります。

もし、動物や細胞実験の結果の場合は、どの程度摂取すればよいかわかりませんし、まだヒトに効果があるのかもわかりません。

 

動物や細胞実験の結果のときは、研究の途上と考えて、その情報を活用するのはやめましょう。

今後ヒトを対象にした研究が実施されるまで待ちましょう。

 

ステップ3:学会発表か、論文報告か

ヒトを対象にした研究に基づいているときには、その研究結果が、学会で発表されたものではなく、論文として発表されているかを確認します。

 

出典に雑誌名とページ番号などが記載してあれば、論文発表です。

 

学会発表と論文報告のどちらも研究発表であることに変わりはありません。

けれども、学会発表はほかの研究者の評価を経ずに、登録すれば発表できてしまいます。

 

一方で、論文で発表するには、査読という、ほかの研究者の厳しい審査を受けます。

質問や指摘をもらい、その内容に従って丁寧に書き直す作業を経ます。

論文を投稿して、実際に発表されるまでに、1年ほどかかる場合もあります。

このような過程を経て発表された論文発表の結果は、学会発表の信頼性よりも非常に高いのです。

 

学会にて発表、という記述があれば、学会発表です。

まだ科学的には不十分な結果と考えて、活用するのはやめましょう。

 

ステップ1~3をクリアした情報というのは

「ヒトを対象にした論文結果」

に基づいた情報ということになりますね。

 

この「ヒトを対象にした論文結果」を科学的根拠つまりエビデンスとして参照し、それを活用して臨床判断を下す、という方法は、Evidence-based Medicine(EBM)と言われていて、医療の場面で取られている方法です(文献2)。

 

エビデンスのある情報を活用する、というこの考え方は、日常の健康情報を活用するときにも使えますね。

 

ステップ4:研究デザインは「無作為割付臨床試験」や「前向きコホート研究」か

エビデンスのある情報であれば、その研究のデザインの種類を確認します。

 

ここで出てくる「無作為割付臨床試験」や「前向きコホート研究」の中身は、今回は難しいので詳しく説明しません。
(今後、別の機会に説明できたらと思います。)

 

これらは研究デザインの種類のことで、因果関係を明らかにできる研究手法になります。

比較的エビデンスレベルの高い研究手法であるとも考えられています(文献3)。

 

たいてい、無作為割付比較試験や前向きコホート研究の場合、これがその研究の「売り」の部分のため、研究タイトルに含まれています。

または、研究論文の要約が手に入れば、その中にこれらの名称が記載されています。

(ただし「無作為割付比較試験」には色々な種類があり、「無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験」とか「ランダム割付比較試験」とか、またはそれらを意味する英語で書かれています。)

 

これらの用語が確認できない場合は、まだ因果関係まではいえない研究デザインで実施したと判断できます。

その情報をもとに食べ方を変える必要はまだなく、ひとまず参考情報としておきましょう。

 

ステップ5:複数の研究で支持されているか

因果関係が言えるエビデンスがあることがわかったら、複数の研究(エビデンス)があるかを確認します。

 

研究結果がひとつあればそれで十分かというと、そうは言えません。

複数の研究結果を統合して解釈することで、次第に結果が安定してきて、信頼度が高まります(文献4)。

複数の研究結果を統合して導かれた研究結果は、さらにエビデンスレベルの高い情報だとも考えられています(文献3)。

 

たったひとつの研究を根拠にしている情報の場合は、今後類似の研究が現れるのを待ちましょう。

 

こうして、複数のエビデンスが存在するときに、初めて、その情報は現時点で活用してもよいものなのかもしれない、と判断できるようになります。

 

ただし、これは「現時点では」という条件つきだということも頭に入れておきましょう。

 

研究は日々実施されています。

 

新しい研究結果が発表されれば、古い研究結果はくつがえされる可能性もあります。

 

常に正しい、と信じ込まない、柔軟な姿勢が大切なんです!

 

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以上、今回は、食情報が活用できるレベルかどうかを、簡単に見分ける5つのステップを紹介しました。

 

難しい研究の中身までを確認しなくても、その情報の出典を調べることで、比較的に簡単に判断できる方法となっています。

 

食情報だけではなく、健康情報全般に活用できますよ!

ぜひ日常生活の中で取り入れてみてくださいね。

 

そして、この5つのステップを満たした情報は、ほとんどないものだ、ということを体感していただけたらと思います!

 

さらに、ステップ4や5までクリアできた情報であっても、その根拠となった研究の中身を詳しくチェックしてみると、あまり信頼できなさそうだな、と判断できる場合も多くあるんです。

そうなると、活用できるほどの食情報って、さらに少ないものなんですよね。

 

個々の研究の中身をしっかりチェックするためのさらに詳しいポイントは、メルマガで解説しています。

そちらも参考にしてください!

 

【参考文献】
1. 坪野吉孝. 検証!がんと健康食品 健康情報の見分け方. 河出書房出版. 2005
2. Jenicek M. Epidemiology, evidenced-based medicine, and evidence-based public health. J Epidemiol 1997; 7:187-197.
3. Murad MH et al. New evidence pyramid. Evid Based Med 2016; 21: 125-7.
4. Antman EM et al. A comparison of results of meta-analyses of randomized control trials and recommendations of clinical experts. Treatments for myocardial infarction. 1992; JAMA 268:240-8.

 

信頼できる食情報を判断する詳細なチェックポイントを

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