今日は、ある栄養士さんのお悩みを紹介します。
この方は以前食品会社にお勤めで、
商品開発の部署にいらっしゃったそうです。
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ある企画で、
食事摂取基準の1日あたりの基準値の1/3を満たすような
1食分の献立を考えるように言われました。
けっこう難しかったです。
基準値を優先して献立を考えると、
食べ合わせが悪い食材を組み合わせることになって、
出来上がった献立は、美味しくなさそうなんですよね。
考えているうちに、本当にそれでいいのかなと思い始めました。
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給食の献立づくりに携わる方々は
きっと同じような悩みをお持ちのこともあるでしょう。
「日本人の食事摂取基準」(文献1)には
食事摂取基準は、習慣的な摂取量の基準を与えるものであり、
「1日当たり」を単位として表現したものである。
短期間(例えば1日間)の食事の基準を示すものではない。
習慣的な摂取を把握するため、又は管理するために要する期間は
おおむね「1か月間程度」と考えられる。
と、書かれています。
つまり、基準値は、「1日当たり」の量で示してはありますが、
1日に食べるべき量を示しているのではなくて、
1か月間で食べておきたい量を
1日当たりに平均したときどれくらいになるか示している、
と捉えればよいのです。
その理由のひとつは、「日間変動」があるからです。
人の食べているものは毎日異なる、という現象を意味する
専門用語ですね。
毎日違うものを食べるのだから、
今日はある栄養素の1日あたりの基準値をクリアできなくても、
1か月の残り29日くらいで別のものを食べて調節する、
いう食べ方でよいはずなんです。
とはいえ、業務の場面では
1食の基準が作られ、その基準を満たすことが求められることも
多々ありますよね。
確かにそれは目安になりますから、
決まりとして守りつつも、
食事摂取基準の本来の使い方を理解しておくことも
大切かな、と思います。
それを知らずに、献立作りに取り組もうとして
窮屈な思いをしている人には、つい、
「1食で基準値を守るのはやめたら?」と
言いたくなってしまうのです。
【参考文献】
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準2015年版. 2014.
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