先日、知人が
食事改善のセミナーを受けたそうなんです。
そこで言われたのが、
「若い女性はたんぱく質が足りていない」
だったそうで、彼女は、
「1日に必要なたんぱく質量って、お肉400 gになるんだね。」
という感想を伝えてくれました。
肉400 g!!
その説明が、お肉を400 g食べましょう、だったのか、
詳しいことは聞けなかったのですが、
そんな感想をいだかせてしまった説明方法は、
あまりよくないのではないか、と感じました。
たしかに、30歳代の女性が
目標量程度のたんぱく質を摂取しようとすると、
肉400 g分くらいになります。
ですが!
たんぱく質=肉という単純な式が
成り立つわけではありません。
そういえば、佐々木敏著「データ栄養学のすすめ」の
第5章の4でも
カルシウム=乳製品が成立しないことを例に挙げ、
「食品と栄養素を安易に結びつけると、
たいせつな食べ方を見落としてしまう」
とあります(文献1)。
実際、日本人のたんぱく質の摂取源として
最も高い割合を占めている単品の食品はごはんです(文献2)。
それに、100gあたりでたんぱく質を多く含む食品といえば、
肉以外に魚や卵、豆類もあります(文献3)。
ちょうど、今年の4月に
コープこうべさんの機関紙「くろまと」のコラムで、
1日に食べておきたいたんぱく質量と
それを摂取するために参考になる献立の組み合わせの考え方を
紹介したところでした(文献4)。
くろまとVol.75「1日に食べておきたいたんぱく質ってどれくらい?」
冒頭の彼女にはこのコラムを紹介し、
お肉だけで1日のたんぱく質を摂取しようとすると
飽和脂肪酸の摂りすぎなども心配なので気を付けてね、
と説明したところ、
納得した様子でした。
また、豆類などにたんぱく質が入っているのは
イメージしていたけれど、
ごはんやパンからも摂れるというのは
意外だった、とのことでした。
「食品○○には栄養素△△が入っている」といっても
その栄養素だけが入っているわけではないし、
その量は食品○○の重量全体の一部でしかありません。
「食品○○より食品××のほうが栄養素△△が多い」といっても
1日に食べる量は食品××より食品○○のほうが多いのであれば、
食品○○のほうが栄養素△△の大きな供給源になることもあります。
単純化した情報は誤解を生みやすく、
実際の食生活改善に活用できるような情報提供の方法には
工夫が必要であることを
考えさせられた出来事でした。
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【参考文献】
- 佐々木敏. データ栄養学のすすめ. 女子栄養大学出版部. 2018.
- Sasaki Set al. J Epidemiol 2003; 13: S23-50.
- 文部科学省. 日本食品標準成分表2015年版(七訂).
- 生活協同組合コープこうべ商品検査センター機関紙「くろまと」vol.75.