夏が近づいてくると、目にするようになる食情報が
「夏バテ対策にビタミンB1を積極的に食べましょう。
ビタミンB1が豊富に入っている豚肉がおすすめです。」
というもの。
その理由として
「ビタミンB1は
炭水化物からエネルギーをつくる過程に関わるので、
不足するとエネルギーが作り出せなくなる。」
などの説明があります。
けれども、夏バテを改善する食事に関して
根拠となる研究結果を見たことはありません。
ビタミンB1不足で生じる欠乏症には脚気がありますが、
現在の日本人で脚気が生じるほどのビタミンB1不足になっている人は
食事調査の結果、ほとんどいないと考えられています(文献1)。
夏バテになったからといって、
ビタミンB1が不足しているとは考えにくいようです。
とはいえ、暑くて食欲がでず、
毎日そうめんばかりでおかずをほとんど食べていない、
という人はいるでしょう。
私自身、研究で高齢者の食事記録調査を行ったとき、
暑くなるにしたがって、
毎日のようにそうめんだけ、という食事記録を提出された方は
確かにいらっしゃいました。
このような食事が習慣になってしまうと、
夏バテがというよりも、
健康全般が心配だな、と思いました。
夏バテには豚肉!と決め込むのではなくて、
食事のアドバイスをする場合には、
その人の普段の食事を調べる食事アセスメントを行い、
その結果から、
不足している栄養素をとれるようにアドバイスをする、という流れを
大切にしたいところです。
食事アセスメントの結果、
そうめんばっかりで炭水化物に偏りがちなことが分かったときに、
たんぱく質もビタミンB1も合わせて摂取できる豚肉をすすめるのは
夏を元気に乗り切るひとつの方法かなと思います。
※この記事は、佐々木敏著「データ栄養学のすすめ」(女子栄養大学出版部)第2章-5を参考にしています。
参考文献の研究結果を図表で確認したい方は書籍をご覧ください。
【参考文献】
- 佐々木敏. データ栄養学のすすめ. 2018.
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