痛風といえば、
尿酸が原因で起こることが知られています。
その体内の尿酸はプリン体から作られていて、
だから痛風患者さんに、
「ビールはプリン体が入っているのでやめましょう」
と言いたくなります。
確かに、プリン体の摂取を抑えることは
アドバイスするべきことのひとつです。
けれども、事はそう単純ではないのです。
日本人男性を対象に、
飲酒による痛風の発症を検討した研究があります(文献1)。
この研究によると、お酒の種類にかかわらず、
ビールでも日本酒でも、たくさんお酒を飲む人で
痛風の発症が増えます。
つまり、問題はアルコールなのです。
実際、体内ではプリン体以外の物質からも尿酸を作っています。
アルコールはその合成を促進してしまいます。
そして多く作られた尿酸は、通常は尿に排泄されます。
けれどもアルコールは、その排泄を阻害することもしてしまいます(文献2)。
このようなアルコールの特徴が原因となって、
体内の尿酸が増えます。
そのため、痛風治療のガイドラインでも、
飲酒そのものを慎むように勧めていて、
ビールだけを控えるようには書かれていません。
こうした疫学研究の結果があるにも関わらず、
人はつい、
尿酸→プリン体→ビール
という単純な因果関係を勝手に作り出して、
それを思い込んでしまいがちです。
当たり前のように言われている食情報にも
それって本当なのかな、科学的根拠があるのかな、と
疑ってみる必要がありそうです。
ひとまず、痛風患者さんには、
ビールだけではなくて、お酒全体の量を減らしたほうがよいことを
伝えるのがよいでしょう。
※この記事は、佐々木敏著「栄養データはこう読む!」(女子栄養大学出版部)第4章-3を参考にしています。
参考文献の研究結果を図表で確認したい方は書籍をご覧ください。
【参考文献】
- Nakamura et al. Nutr Metab Cardiovasc Dis 2012; 22: 989-96.
- 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン策定委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)ダイジェスト版. 2010
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